遺産として分け与える財産は土地や建物のような不動産や預貯金などの債権等です。土地に関しては遺言書の中で地目や地積を明記することが重要です。これは登記簿を参照して、そこに記載されている通りの表記にするというのが基本ですが、そもそも現況が違っていたりはしないかを遺言書を書く前に確認しておきます。次に株券がある場合は自分が取引しているところの正式名称を確かめるのが必然です。銀行や証券会社は実はよく似た名前があり普段口にしている略称では混同しかねないところが絶対ないとは言えないからです。また株というのはどんどん売り買いするものですから、自筆証書遺言を書いた時に曖昧な記憶で書いたら実はその前に手放した株だったという可能性もあります。
株券や預貯金は流動性が高く、書いた遺言書が実際に行使されるまでのあいだに動きがあるものですから、遺言書の中で触れるにはそもそも細心の注意が必要です。特に預貯金は額が変わりますから、正確な把握のために書く前に洗い出しておくとしても残高を具体的に遺言書に書くことはしません。そしていわゆるプラス財産の中で書き方が難しいのが抵当権などの物権がある時です。遺言書を書く時点でどのような状況かの確認が不可欠ですし、誰に継いでもらうかも考慮が重大になります。
マイナス財産は基本的に法定の割合で分割されますが、遺言書で特定の人に任せると書いても債権者はそれに拘束されません。なお、遺言書を書く前にどれだけ財産の洗い出しを行なったとしましても、漏れが出るリスクがあります。そういう時のために遺言書内でこれに記載のない財産は誰々に一切を相続させるという趣旨の一文を入れておくのが得策です。